ヘパリン起因性血小板減少症
Heparin-Induced Thrombocytopenia は じ め に ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)は、出血に次ぐ重大な副作用であり、稀有ではあるが、現在では周知の疾患となっている。 しかし、本邦では HITの認識はかならずしも十分ではなく、症例報告が散見されるに過ぎない。 また本邦でのHITの発生頻度に関する調査報告も少ないが、日常的にヘパリンを使用する透析領域では約1200人, 冠インターベンションを伴う循環器領域では約1800人、その他の領域を合わせると年間合計約5000人のHITの発症が予想されている。 一方海外では、HITは薬剤の副作用として訴訟の対象となる懸念からも重視され、HITの診断から治療への取り組みが多方面で行われ、多くのエビデンスが積み重ねられている。 例えば、webで公開されている米国のNational Guideline Clearinghouseの未分画ヘパリンと低分子ヘパリンの副作用でHITをみると、短文ながらも適格な記載がなされている。 それによると、血栓の合併のないHITでも、 ヘパリン中止後100日以内は血栓発生リスクが高く、また既往歴にHITがあると、未分画、低分子分画ヘパリンのいずれも使用すべきでないとしている。また、 HITの診断基準である血小板数がヘパリン使用中に10万/μl以下に減少、もしくは50%以上の減少が認められる場合には、ヘパリンを中止し、HIT抗体検査を行うべきであるとしている。 続いて、HITの治療薬として、ヘパリンの代替に直接的抗トロンビン剤を選択することである。 それには米国食品医薬品局(FDA)が承認した直接的抗トロンビン剤アルガトロバン、lepirudin、bivalirudinの三種を示している。このガイドに従えば、HITのヘパリン代替の治療薬として、本邦で使用できるのは、アルガトロバンのみということなる。(現在アルガトロバンのHITの予防・治療に対する医師主導型の治験が開始されている) 本webサイトでは、HITの病態、診断・治療方法の普及を図るため、HITに関する情報提供を行っている。これらの情報が臨床現場でのHIT診療に少しでも役立てば幸いである。
(平成16年10月 HIT情報センター代表 岡 本 彰 祐)
岡本彰祐先生は平成16年11月1日に肺不全のため永眠されました。先生は常に新しい研究に意欲を燃やされ、とくに「人の役に立つ研究を」ということで薬の開発(イプシロン、トランサミン、アルガトロバン)を手がけてこられました。岡本先生は、米国でのHIT治療にアルガトロバンが貢献していることを知り、本邦のHIT患者の治療に少しでも貢献できればと、松尾武文先生と共にHIT情報センターを設立し、HIT治療の確立に力を注いでこられました。本センターは今後も岡本先生の意志を継ぎ、HIT治療の確立に尽くす所存です。 (HIT情報センター) 岡本先生のHP 
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